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【食育セミナー】「自立した地域食育活動の展開を目指して~子どもを対象とした食育活動の充実に必要なこと~」を開催しました

青森中央短期大学では、青森県民が健全で豊かな食生活を送ることができるよう「ヘルスコミュニケーションを用いた食育活動の展開~青森を健康長寿県とする食育拠点づくり~」をテーマに、さまざまな食育活動を実践しています。

子どもたちに、食に関する正しい知識や食習慣を身に付けてもらい、次世代に食文化を継承していくために、自発的で継続的な食育活動を推進すること、「食育推進リーダー」を育成することを目的として、2019年11月23日(土・祝)、本学において「青森中央短期大学食育セミナー」を開催しました。

当日は、地域で食育活動を実践している方や、食育や食文化に関心のある方、食物栄養や幼児保育を専攻している学生など、市内外から100名近い参加者が集まり、基調講演や実践報告、ポスター発表から効果的な方策を学びました。

基調講演

「食育の場をどうデザインするか?~子どもの食育活動の充実に向けて~」

平本福子氏(宮城学院女子大学教授)より、食育活動の実践例をご紹介いただき、学びの場をつくる上で、環境づくり・環境設定がいかに重要であるかをご講演いただきました。

平本氏の基調講演の様子

福本先生は、“1食に、何を、どれだけ食べたらよいか”が誰でも簡単にわかる「3・1・2弁当箱法」や地域の魚をテーマに魚と人間と環境、地域との関わりを学ぶ「さかな丸ごと食育」などの事例を挙げ、子どもたちの興味・関心を広げ、主体的に考え、学び合う実践とするための環境設定やさまざまな工夫を説明されました。

私たち栄養関係者は自分たちが教えたいこと、やりたいことを中心に考えがちですが、子どもに寄り添い、子どもの考えを聴きながら、PDCAを回して活動を進めていくことが大切です。そのために、子どもが自分の意見を話すことができるように声掛けし、雰囲気づくりをすること、また、子ども主体で進めていく中で、子どもだけでは実施が難しいところを専門家として助言することや活動の効果を専門的に担保することが、指導者の行う支援だとおしゃっていました。

子どもの主体的な活動、子どもに選択権を委ねる活動を行うためには、大人がよほど丁寧に子どもを見て、支えてあげる必要がありますが、子どもの育つ様子、変化していく姿を見ることが、指導者の大きなやりがいになるそうです。困ったときこそ新しい仲間が増えるチャンスだと捉え、頑張りすぎず周囲の人に頼ることで、連携が深まるのだとおっしゃっていました。

活動では、学んだことをアウトプットする場を設けることも有効です。子どもが地域の大人に教えてあげるなど、子どもにとっては大変だけれどやりがいのある機会をつくることで、子どもが地域の大人を動かし、他者からの評価を得て、大きく成長するのだと熱く訴えられました。

実践報告

「地域での食育活動実践の成果と課題」

基調講演に続いて、地域で実際に食育活動を展開している方から、その実践の様子をご紹介いただきました。

まず、山谷詠子氏(青森市食生活改善推進員会長)から、青森市で平成30年度から実施している「こども食育レッスン1・2・3♪」の取組みについて報告されました。なお本取組みは厚生労働省スポーツ庁主催の第8回「健康寿命をのばそう!アワード」において、自治体部門厚生労働省健康局長優良賞を受賞しています。

青森市のこども食育レッスン1・2・3♪は、未来の青森を担う就学前の子どもたちの健康的な食習慣づくりを推進することを目的に、5ヵ年で市内113園全園に実施する事業だそうです。保護者向けプレレッスン、園児および保護者に向けての食育レッスン1・2・3♪、親子向けアフターレッスンの三部構成となっていて、山谷氏からは食生活改善推進員会が担当する食育レッスン1・2・3♪の様子が報告されました。

三色食品群やクッキングなどのレッスン内容とともに、レッスン前の実施園との打ち合わせや従事者スキルアップ研修など、入念な事前準備や練習、実施後の振り返りの様子が紹介され、普段は大人を対象に活動されている食生活改善推進員の立場から、子どもにしっかり伝えること、子どもへの対応の難しさを伝えていただきました。活動を通して、毎日のこと、当たり前のことである「食べること」を伝える大切さや、園や家庭との食育の輪のつながりを実感されているそうです。

山谷さんは、食べ物や調理の活動の中で、子どもの豊かな発想力や感性、大きな可能性を実感され、子どもの思いやりの心や挑戦する気持ちが育っていることを感じているそうです。また、そのような子どもの姿、その様子を見た保護者の表情や声が活動の支えとなっているとおっしゃっていました。


山谷氏による実践報告

続いて、和田紫織氏(幼保連携型認定こども園 木の実こども園 管理栄養士)から、園で取り組んだ食育活動「世界一おいしいレストラン」について報告がされました。子どもの自主性と創造性を大切にする、食育と保育を融合させたこのユニークな取組みは、2019年に「第13回食育コンテスト文部科学大臣賞」を受賞しています。

お店屋さんごっこと食育が融合した「世界一おいしいレストラン」は、4歳児13名が8ヵ月かけて取り組んだプロジェクトで、から揚げ屋さんやカレー屋さん、おもちゃ屋さんなどを異年齢児と一緒に作り上げ、5歳児と、4歳児の保護者をお客様に2日間限定でオープンしたレストランなのだそうです。和田さんからは、活動のきっかけや子どもたちの様子、職員の関わりなどを詳しくご紹介いただきました。

このプロジェクトは、子どもたちの「レストランをやりたい」という気持ちから始まったそうです。先生たちは、大人に主導権があるのではなく主人公は子どもであること、子どもたちのさまざまな意見やアイディアを保育者目線で判断せずに子どもたちがやりたい世界を膨らませること、指示ではなく補助すること、などを大切に、子どもたちとレストランを作ることを決意したとおっしゃっていました。子どもたちのアイディアや想像(創造)力、可能性を引き出すプラスの言葉がけや保育と食育の融合(職員間の連携)の重要性などを説明されました。活動におけるさまざまな体験、異年齢児とのコミュニケーションなどを通して、子どもたちの発想力や感謝の気持ち、心の育ちが感じられたそうです。

和田さんは、食育活動は食べものへの興味や関心、知識に偏ったものではなく、子どもたちの日々の生活の中にきっかけがあり、深く関わり合い高まっていくことで、乳幼児期の食との出会いが充実したものなるのではないか、とおっしゃっていました。この食育活動が今後の遊びや生活、食との関わりにどうつながっていくのか、興味深く見守っていくとのことでした。


和田氏による実践報告

基調講演、実践報告を受けて、続くパネルディスカッションでは、報告者のお二人と、助言者として平本先生、コーディネーターの青森中央短期大学久保薫学長が登壇し、活発な意見交換が行われました。以下に簡単にご紹介します。

子どもの自主的な活動の支援

  • 子どもたちがやる気をもって自主的に活動するためには、子どもたちの興味関心を高める環境を準備して整えることが必要である(食材の実物に触れる機会をつくるなど)。
  • 栄養士も厨房から出て、普段から子どもたちとコミュニケーションをとり、さまざまな考えを話してくれるような信頼関係を築いておく。
  • 「自主性を育てる」というが、子どもは基本的に「自分の気持ちを伝えたい、やりたい」という感情を持っている。それを表現できない環境をつくってしまっていることが問題であり、環境を設定することが重要である。
  • 一定期間、子どもたちのアイディアに寄り添い進めていくプロジェクト型保育では、子どもの「自分で考える力」の成長が見事なまでに著しい。そのような子どもの姿は、指導者のエネルギーになって確信になる。一度その経験をすると指導者自身も成長する。子どもの自主性によって周りも育つ。初めは不安を抱えていても、子どもたちを信頼することが大切である。
  • 食育というと何か特別なものという印象を持つかもしれないが、日々の「食べること」をちょっぴり意識するための声掛けとか、そういうところから始めて、継続するとよい。

他職種間、地域との連携

  • (子ども園での食育)栄養士と保育教諭の連携において、お互いの得意なところをたて役割分担をする。
  • 活動にあたって栄養の関係者ではわからない子どもたちの発達や成長については、専門である保育教諭の先生から助言を受けたり、子どもたちを見て記録するところは保育教諭の先生に頼んだりするとよい。
  • 例えば実施園との事前の綿密な情報交換や真摯な態度など、丁寧な対応がより良い関係の構築、連携につながる。初めての相手には、これまでの実践の様子や成果を写真や動画などで伝えるとわかりやすい。

実践の評価と記録

  • 子どもたちの発言というのは実践の評価を反映したものの一つである。このような実践を半年積み重ねていくと子どもたちはどんなことを言うだろうか、というのを、家庭で簡単にメモしていただくのも有効である。
  • さらに良い実践に向けての次のステップは「記録」だと思う。文書として残していくと何百人、何千人の人が共有できるので、この活動をまとめていただきたい。


パネルディスカッションの様子

ポスター発表・展示

本セミナーの冒頭では、地域や団体で行われているさまざまな食育活動の内容や様子、実際に使用している教材などを紹介、展示する試みとして、計11件の団体による「食育の取組み紹介」のポスター発表が行われました。
保育施設や行政の食育関係者による多種多様な活動紹介や、あおもり食命人による手作りふりかけのワークショップに、会場は大いに盛り上がりました。


「食育の取組み紹介」ポスター発表


あおもり食命人による簡単お手製ふりかけのワークショップ

総括

本セミナーでは、平本氏、山谷氏、和田氏から、とても元気になるお話をいただき、これからまた食育を頑張っていこうという気持ちを会場全体で共有することができました。

参加者対象のアンケート調査では、

  • 食育に取り組んでいる人たちがたくさんいることを知りました。「困った時は助けてもらう」実践してみたいと思いました。
  • 2名の方の実践活動に涙が出るくらい感動しました。食育、保育、すばらしい出会いになりました。
  • 食育を通したコミュ二ケーションの大切さを改めて感じました!! 子ども、保育教諭、栄養士…。また、食に対して少し意識をもつことを心に残りました。
  • 若い人達が、食育に関心を持ち一生懸命勉強されていて嬉しくなりました。

などのご意見をいただきました。

また、同調査では、食育活動の実践において困っていることについても質問しています。実践者の方からは、「子どもだけではなく“親”を巻き込むこと」や「知識を行動(日常生活での実践)につなげる動機付け、心を動かす働きかけ」など、「衛生面、食物アレルギーの子どもに対する配慮、専門的な質問への対応」、「教材づくり」などの他に「業界内での食育に精通した人材の育成」や「食育活動に取り組んでいる人たちとのネットワークづくり」などが挙げられました。

本学は今後も、県内の食育活動がさらに発展していくよう、情報発信や活動支援策を充実させ、幅広い世代への食育活動に取り組んでいる方のお手伝いをしていきたいと考えています。青森を健康長寿県とする食育拠点づくりを目指し、本日お集りの方々と一緒に食育活動を実践していきたいと思いますので、どうぞ皆様の何かの試みの際には、思い出してお声を掛けていただければ幸いです。

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